#13 バーリング加工とは?
用途・設計ポイント・注意点

バーリング加工(穴フランジ加工)は、薄板の穴まわりを立ち上げて“ねじが掛かる長さ”を稼ぐための代表的な板金塑性加工です。薄板のねじ締結で起きやすい強度不足やねじ山不足を、部品追加なしで改善できる点が評価されています。

本記事では、バーリング加工の仕組みから用途、メリット・デメリット、種類の違い、設計で重要な下穴径・板厚・バーリング高さの考え方、材質別の注意点、タップ加工との違い、代替工法、図面指示、よくある疑問までを体系的に整理します。

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Index[非表示]

  1. 1.バーリング加工の概要と仕組み
  2. 2.バーリング加工の用途と活用例
  3. 3.バーリング加工のメリット
  4. 4.バーリング加工のデメリットと限界
  5. 5.バーリング加工の種類
    1. 5.1.普通バーリング加工
    2. 5.2.しごきバーリング加工
  6. 6.設計の要点:下穴径とバーリング径
  7. 7.板厚とバーリング高さの関係
    1. 7.1.バーリング高さの目安と算出式
  8. 8.材質別の注意点(鉄・ステンレス・アルミ)
  9. 9.バーリング加工とタップ加工の違い
  10. 10.代替工法の選び方(クリンプナット・溶接ナット)
  11. 11.図面指示の書き方と記入例
  12. 12.よくある質問(バーリングタップ・下穴径・板厚の判断)
  13. 13.バーリング加工のポイントまとめ
    1. 13.1.おすすめ記事
  14. 14. 

バーリング加工の概要と仕組み

バーリング加工は、下穴周辺の材料を塑性変形させて立ち上がり(フランジ)を形成し、見かけの板厚(有効ねじ長さ)を増やす加工です。

薄板にそのままタップを立てると、ねじ山が12山程度しか確保できず、締結力不足やねじのなめ(ねじ山のつぶれ)が起きやすくなります。バーリングは穴の縁を筒状に起こすことで、実質的なねじの掛かり長さを増やし、この弱点を補います。

加工の基本は、先に下穴をあけ、その穴にパンチを押し込んで周囲の材料を引き延ばしながら立ち上げる流れです。材料を切って足すのではなく、板の材料を移動させて形を作るため、板厚は一定ではなく、立ち上がり部の肉厚が変化します。

成否を分けるのは、材料がどれだけ伸びに耐えられるか(延性)と、伸びが集中する位置の管理です。下穴が小さすぎると伸び量が増えて割れやすくなり、大きすぎると高さが出ずねじ長さが足りない、といったトレードオフが発生します。

バーリング加工の用途と活用例

薄板にねじを持たせたい場面で、バーリングはタップ前工程として、またはタッピングねじと組み合わせて幅広く活用されます。

代表例は、板厚が薄い筐体やブラケット、カバー類で、分解やメンテナンスを前提にねじ締結したいケースです。溶接やリベットに比べて着脱が容易で、組立工程の自由度も上がります。

バーリング後にタップ加工を行い、一般的な機械ねじで締結する使い方が多く見られます。薄板でも必要なねじ山数を確保しやすく、締結の再現性を上げられるためです。

用途によっては、バーリング後にタッピングねじを使い、タップ工程自体を省略することもあります。ただし、繰り返しの締結や高い強度が必要な箇所では、ねじ山の品質と検査がしやすい「バーリング+タップ」が有利になる場面が多いです。

バーリング加工のメリット

部品追加なしでねじ掛かり長さを確保でき、軽量・低コスト・省スペース化に寄与するのがバーリング加工の大きな利点です。

最大のメリットは、薄板でもねじの有効長さを稼げることです。ナットを追加したり板厚を上げたりせずに済むため、部品点数と重量を増やさずに締結強度を底上げできます。

板金工程としても合理的で、プレスやパンチングで下穴とバーリングを同一工程内でまとめられる場合があります。工程集約はコストだけでなく、段取りや管理ポイント(作り込みのばらつき)を減らす効果があります。

省スペース化にも効きます。ナット分の外形・逃げが不要になり、狭い場所や干渉が厳しいレイアウトでも締結点を作れるため、設計の選択肢が広がります。

バーリング加工のデメリットと限界

材料延性や板厚、必要強度、形状制約によっては、割れ・しわ・高さ不足などが発生し、バーリングだけでは成立しないケースがあります。

代表的不良は割れです。バーリングは穴縁が最も強く伸ばされるため、材質が硬い、加工硬化しやすい、板厚の割に高さを出しすぎる、といった条件が重なるとクラックが出やすくなります。割れは外観だけでなく、ねじ締結時の破断や疲労寿命低下に直結します。

次に多いのがしわ(座屈)や耳(立ち上がり高さの偏り)です。しわは材料の流れが余って押し込まれることで出やすく、耳は材料の異方性や抜き・成形条件の偏りで起きます。ねじの座りや座面精度に影響し、ねじの斜め入りやトルクばらつきの原因になります。

形状制約も重要です。バーリングの周囲に曲げ、ビード、段差、近接穴があると材料流動が妨げられ、不良や寸法不安定が増えます。バーリングは単体の寸法だけでなく、周辺形状を含めた成形性で可否が決まる点が限界になりやすいです。

バーリング加工の種類

目的(高さ重視・内径精度重視・割れ抑制など)により、代表的に「普通バーリング」と「しごきバーリング」が使い分けられます。

バーリングは同じ立ち上げでも、出来上がりの内径精度、肉厚の均一性、面粗度、ねじ品質に求めるレベルで最適解が変わります。量産での安定性や検査基準まで見据えると、方式の選定がコストと不良率を左右します。

基本方式の普通バーリングは適用範囲が広い一方で、肉厚や内径が条件に影響されやすい傾向があります。より高品質を狙う場合に、しごき工程で内面を整える考え方が有効になります。

どちらを選ぶかは、必要なねじ強度だけでなく、後工程(タップかタッピングねじか)、要求される内径公差、割れ許容の有無、金型コストと生産数のバランスで決めるのが現実的です。

普通バーリング加工

普通バーリングは、下穴に対してパンチを押し込み、穴縁の材料を引き延ばしてフランジを立ち上げる最も一般的な方式です。工程がシンプルで、金型構成も比較的簡単なため、試作から量産まで幅広く採用されます。

適用しやすいのは、延性が確保できる材質で、必要な高さが過大でない条件です。一方で、下穴が小さすぎると伸びが増えて割れやすく、下穴が大きすぎると高さが不足しやすいという、寸法設計の影響が大きい方式でもあります。

発生しやすい不良として、割れ、耳、高さのばらつき、しわが挙げられます。後工程でタップを立てる場合は、内径のばらつきがタップ負荷やねじ山品質に影響します。タッピングねじで完結させる場合も、立ち上がり部の割れや肉薄があるとねじ保持力が落ちるため、外観だけでなく締結試験で評価することが重要です。

しごきバーリング加工

しごきバーリングは、立ち上げた後にしごき(アイアニング)で内面や肉厚をならし、内径精度や面粗度を整える方式です。普通バーリングに比べて、ねじの入りやすさやタップ後のねじ品質を安定させやすくなります。

しごきによって内径が安定すると、タップ加工では工具負荷が読みやすくなり、ねじ山の有効径のばらつきも抑えやすくなります。結果として、限界ゲージでの合否が安定し、手戻りや追加選別のリスク低減につながります。

一方で加工負荷が増え、設備能力や金型寿命への要求が上がります。金型コストも上がりやすいため、生産数が多い、ねじ品質要求が高い、後工程の不良コストが大きい、といった条件で投資対効果が出やすい方式です。

設計の要点:下穴径とバーリング径

下穴径はバーリング高さ・割れやすさ・内径(バーリング径)・タップ下穴条件に直結するため、設計段階での決め方が重要です。

下穴径は「高さを出したい」という要求と「割れを避けたい」という要求のせめぎ合いで決まります。小さめの下穴は高さを稼ぎやすい反面、材料の伸びが大きくなり割れやすくなります。大きめの下穴は割れにくい反面、高さが出ずねじ掛かりが不足しやすくなります。

また、バーリング後の内径(バーリング径)は、タップの下穴としても機能します。つまり下穴径は、バーリングでどう変形して最終内径がいくつになるか、という見込みまで含めて設計する必要があります。加工側の条件(パンチ形状、クリアランス、潤滑、しごき有無)で同じ図面値でも結果が動くため、量産前の試作で最終内径の実測確認が欠かせません。

タップ種別でも考え方が変わります。切削タップは切りくず排出やかじりの余裕が必要で、下穴が小さすぎると折損リスクが上がります。転造タップは塑性変形でねじ山を作るため、下穴径の影響がより大きく、わずかなズレがねじ山の出来(有効径)に直結します。採用するタップ方法を先に決め、それに合わせてバーリングの狙い値を置くのが安全です。

板厚とバーリング高さの関係

バーリングで確保できる高さ(有効ねじ長さ)は板厚に強く依存し、薄板ほどどこまで稼げるかの見極めが必要です。

バーリングの高さは、板の材料を引き延ばして作られます。板厚が薄いほど、同じ高さを狙ったときに必要な伸び率が大きくなり、割れや肉薄のリスクが上がります。つまり薄板はバーリングの効果が大きい一方で、成立範囲が狭いという性質があります。

ねじ締結として成立させるには、必要なねじ山数と、実際に確保できる有効ねじ長さを突き合わせる必要があります。一般に薄板のねじでは、最低限必要な掛かり長さの考え方があり、設計段階で不足が見えるなら、バーリング条件の見直しだけでなく、代替工法も含めて検討したほうが早いケースがあります。

また、バーリング高さは図面上の数値だけで語りにくく、金型条件・潤滑・材質ロット差で変動します。量産の安定性まで考えるなら、狙い高さに対する許容差と検査方法を先に定め、工程能力で確実に作れるレンジに設計を寄せることが重要です。

バーリング高さの目安と算出式

バーリング高さの目安は、まず「必要なねじ有効長さ」から逆算すると整理しやすくなります。例えば必要山数を確保するには、ねじピッチに対して必要な山数を掛けた長さが最低ラインになり、そこに加工ばらつきや座面の影響を見込んで余裕を持たせます。

下穴径と高さには傾向があります。下穴径を大きくすると材料の引き延ばし量が減り、高さは下がる方向に働きます。下穴径を小さくすると高さは出やすい一方、伸びが増えて割れリスクが上がります。高さだけを追うと失敗しやすいため、割れない範囲で必要長さを満たすポイントを探すのが設計の要点です。

算出式や簡易計算は、あくまで初期検討のための目安として使うのが安全です。実際の高さ・内径・肉厚分布は、金型形状と加工条件で変わります。最終的には試作で、立ち上がりの割れ有無、内径、タップ後のゲージ合否、締結試験(引抜き・トルク)まで確認して成立条件を固めるのが確実です。

材質別の注意点(鉄・ステンレス・アルミ)

同じ寸法でも材質で成形性・割れやすさ・スプリングバックが変わるため、鉄・ステンレス・アルミで注意点を分けて検討します。

鉄(SPCCなど)は比較的成形しやすく、バーリングの適用範囲が広い材質です。ただし高強度材になるほど延性が下がり、割れが増えやすくなります。表面処理や後工程の曲げがある場合は、加工硬化の蓄積でクラックが顕在化することがあるため、工程順も含めて検討します。

ステンレスは加工硬化しやすく、かじりやすい材質です。バーリングでは割れだけでなく、タップ加工時のトルク増やタップ折損リスクが上がりやすくなります。潤滑条件、タップ種別(切削か転造か)、ねじ品質要求をセットで決め、無理に高さを追わないことが安定化の近道です。

アルミは成形性が良く見える一方で、合金種や調質で性質が大きく変わります。柔らかい材はねじ保持力が課題になりやすく、硬い材は割れが課題になりやすい、という両極が出ます。締結の繰り返しでねじ山が傷みやすい用途では、バーリング単独にこだわらず、インサートやクリンプナットを含めて評価したほうが総合品質が上がる場合があります。

バーリング加工とタップ加工の違い

バーリングはねじが掛かる長さを作る加工、タップはねじ山を形成する加工であり、目的と品質管理ポイントが異なります。

バーリング加工は穴の周囲を立ち上げて、ねじが効く長さ(有効ねじ長さ)を作る工程です。対してタップ加工は、その内面にねじ山を作り、規格の有効径に収める工程です。似て見えて、管理すべき寸法と不良モードが違います。

バーリングで重要なのは、高さ、割れ、内径、肉薄、座面状態です。ここが不安定だと、タップの負荷がばらつき、ねじ山の精度も安定しません。つまりタップ不良の原因が、実はバーリング側にあるケースが少なくありません。

タップでは、ねじプラグゲージによる合否確認が基本になります。特に転造タップは下穴径の影響を強く受けるため、バーリング後の内径管理がよりシビアです。工程設計としては、バーリングで内径を作る段階から「最終的にゲージで合格するねじを安定して作れるか」を逆算して設計するのが実務的です。

代替工法の選び方(クリンプナット・溶接ナット)

必要強度・作業性・コスト・設備制約によっては、バーリング以外(クリンプナット/溶接ナット等)のほうが合理的な場合があります。

バーリングが向くのは、薄板に中小径のねじを持たせたい、軽量化したい、部品点数を増やしたくない、といった条件です。一方で、必要強度が高い、締結を繰り返す、母材が割れやすいなどの条件では、別工法のほうが安全側になります。

クリンプナットは、比較的安定してねじ品質を作りやすく、薄板でも高いねじ強度を確保しやすい工法です。反面、部品追加によるコスト増と、カシメ設備・作業スペースが必要になります。

溶接ナットは強度面で有利ですが、溶接ひずみ、スパッタ、表面処理との相性、外観要求など、別のリスクが出ます。選定は、締結強度だけで決めず、工程全体の不良コストと作業性まで含めて比較することが重要です。

図面指示の書き方と記入例

加工側の解釈ブレを防ぐには、下穴径・バーリング内径/外径・高さ・板厚・ねじ仕様・公差・面取り等を図面で明確に指示します。

バーリングは、図面の情報が不足すると加工側が「下穴だけの指示」や「高さだけの指示」を手掛かりに現場合理で作り込み、結果として内径やねじ品質が設計意図から外れることがあります。狙いが締結品質なら、寸法の優先順位まで含めて伝える必要があります。

基本的に指示したいのは、板厚、下穴径、バーリング後の内径(必要なら外径も)、バーリング高さ、ねじ仕様(例:M4、並目など)、タップ有無、面取りやバリ方向です。タップまで要求する場合は、ゲージ検査の前提になるため、公差やねじ等級の扱いも明確にしておくとトラブルが減ります。

また、バーリング面の座りが重要な場合は、ねじ頭や座金が当たる側の平面性、バリ管理、表面処理後の寸法変化も意識します。現場で困りやすいのは「高さは合っているが、座面が荒れて締結が安定しない」ケースなので、機能面(締結安定)の要求を注記で補うのも有効です。

よくある質問(バーリングタップ・下穴径・板厚の判断)

バーリング後にタップは必要か、下穴径はどう決めるか、板厚が薄いときの判断基準など、現場で迷いやすい論点をQ&Aで整理します。

バーリング後にタップが必要かは、使うねじと要求品質で決まります。タッピングねじで、締結回数が少なく、必要強度も中程度ならバーリングまでで成立することがあります。一方、機械ねじを使う、締結を繰り返す、トルク管理が必要、ゲージで確実に保証したい場合は、バーリング後のタップ加工が基本になります。

下穴径の決め方は、まず必要なねじサイズとタップ方式を決め、次にバーリングで狙う高さと割れリスクのバランスを取ります。下穴径は高さ・割れ・最終内径のすべてに効くため、机上計算だけで確定させず、試作で内径と高さ、タップ負荷、ゲージ合否を確認して量産条件を固めるのが最短ルートです。

板厚が薄いときは、バーリングで稼げる高さに限界があるため、必要ねじ長さを満たせるかを早めに見切るのが重要です。無理に高さを追うと割れや肉薄で不良が増え、結果的にコストが上がります。成立が怪しい場合は、しごきバーリングの採用、ねじサイズの見直し、クリンプナット等の代替工法まで含めて比較検討するのが現実的です。

バーリング加工のポイントまとめ

用途・限界・種類の違いを押さえたうえで、下穴径×板厚×必要ねじ長さの整合、材質差、図面指示まで一連で管理することが成功の鍵です。

バーリング加工は、薄板のねじ締結を成立させるための有力な手段で、部品追加なしにねじ掛かり長さを増やせる点が強みです。一方で、下穴径と材質によって割れや高さ不足が起きやすく、設計と加工条件のすり合わせが欠かせません。

普通バーリングとしごきバーリングは、コストだけでなく、内径精度やねじ品質の安定性まで含めて使い分けると効果的です。ねじ要求が厳しいほど、バーリング単体ではなく、タップ方式や検査方法まで含めた工程設計が重要になります。

図面では、下穴径、バーリング内径・高さ、板厚、ねじ仕様、タップ有無などを明確にし、加工側の解釈ブレを防ぎます。最終的には、必要ねじ長さを満たすか、割れが出ないか、ゲージと締結試験で保証できるかを試作で確認し、量産の安定条件として固めることが成功につながります。

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